FEエンゲージクリア[若干ネタバレあり]

発売日に入手したFEエンゲージをクリアした。 初回プレイはハード・クラシックで91:25で、初回クリアに要した時間としては歴代最長、のはず。*1

TL;DR

100点満点では66.7点。内訳は以下の通り。

  • ゲーム性は85/100
  • ストーリーは65/100
  • キャラクタは50/100

ゲーム性面: タクティカルSLGとして

この部分については概ね文句はない。 難度調整が絶妙で、風花雪月ではハードくらいなら雑にやっても簡単には死者が出なかったところ、今作ではハードでも雑にやれば容易に死者が出る程度のシビアさであったが、理不尽な難度ではない、という、中間の難度としては適切な設計だったのではないか。

「紋章士」システムも良かったのではないか。 後半は自分で考えて上手に使わないと突破できないようになっていたこと、また上手に使えるような設計であったこと、等々、ゲームとは上手く噛み合っていたように思う。 元ネタとなったキャラクタの個性を下敷きにした特性も悪くない。個人的には、過去作の主人公級としては最も好きなキャラであるところのリンが大変リンらしい特性・技であったのに割と満足している。 育成面でも、紋章士とのシンクロレベルによって武器の素質が身に付きクラス選択の幅が広がる、というシステムは面白かった。

敢えて少し気になった点を述べると以下の通り。

  • クラスチェンジアイテム*2の入手が過去作に比べ渋いこと。レベル20の仲間が滞留してたタイミングが結構あった。渋さでは歴代上位に入るはず。
  • 紋章士が途中でいなくなるタイミングがあるのだが、それによって特に魔法系のクラスチェンジが阻害されること。殊に、アンナの魔力の伸びが高いことには後で気づいたのだが、「魔道書の素質」はいなくなる紋章士にしかなく、マージナイトにするタイミングが遅れる羽目になった。
    • 概ね本作のシステムの実装意図は自由度を追求したものと思われ、とすればストーリーとの噛み合いは如何なものだろうか、と思う。もう少し復帰を早めても良かったのでは、などと思うところ。
  • キャラの成長率には結構偏りがあって、使えるキャラとそうでないキャラの差が大きい。ストーリーの分岐がないことと相俟って、繰り返しプレイする回数は限られそう。
    • この点でストーリー分岐があった上に大体誰でも主力キャラに(比較的)しやすく繰り返しプレイのやりがいがあった風花雪月*3とは対照的と思う

ストーリーとキャラク

以下の動画は序盤について語っているが、後半でも概ね変わらない、という感想を持った。


www.youtube.com

キャラクタ描写について

各国の王族たる人物たちとそれ以外の描写量の差が大きい。各国の王族たちはストーリーに合わせて何や彼や喋るのだが、それ以外は、初回登場時を除いて概ね支援会話のみである。 そしてその支援会話が、登場人物のエキセントリックな「属性」を只管強調するものになっている。このことから、当方としては、「登場人物」というより「属性が服を着て歩いている」印象を強くした。

これが風花雪月であれば、選択した学級に応じて、その所属メンバがストーリーの各所でフィーチャーされたはずである。そのテキストの豊富さと相俟って、属性ではなく登場人物としての評価ができるわけである。

ただ、支援会話の量は少ないわけではない。今回は、支援会話がある関係では必ずABCの3段階あって、一人当たりの支援相手数も多いので、テキスト量としては風花雪月を上回っている可能性すらある。 問題は質で、殆どの組み合わせで「属性」関連会話の域を脱していない。 これが風花雪月なら、その社会の中で自分がどういう生き方をしてきたからこうであって、相手はこうだからこう、という、その社会と登場人物たち、或いは登場人物同士の葛藤が支援会話にも頻出する。たとえばシルヴァンなら*4、紋章持ちであることによる兄弟との相剋、女性不信とそこからくる軽薄な女性関係、努力しない天才肌*5、という面が見え、さらに風花雪月一の色男であるにも拘らずかなりの女性キャラクタとの支援関係がBに留まる*6、という形でこれでもかとそういった多面性が描かれる。こういう要素は本作にはほぼ皆無と言って良い。

そういう多面性がない「キャラクタ」は「人物」ではなく「書割」であると強く思う。

ストーリーについて

戦う相手が主として「異形兵」なるモンスターである、というのは、人間同士の戦いという面も強くあった歴代作とは一線を画している。その良し悪しについては論があるだろう。この点、「戦争で人を殺す」ことにかなり自覚的であった風花雪月とは完全に対照的である。

演出技法については、悪い意味で、日本のあまり出来が良くないドラマに似ているという印象を強く持った。 一言で言えば、最初から最後まで、感動させようとする意図が見えるが、演出のせいかその説得力に疑問ということである。

海外の評では、このストーリーを全体として「空虚」としたものがあったようだが、それも十分理解できる。*7

前掲動画では序盤のストーリーとその演出について述べていたが、この調子は残念なことに最後までずっと続く。 ルミエルとの関係もそう、ヴェイルともそう。もう少し

個別の章で気になったのは以下。

  • 14章
    • ソルム軍強すぎやしませんかね。この世界での軍事国家とされるブロディアの軍より、シナリオの前後関係の差分を差し引いても明らかに強い。軍事国家形無しでは。
  • 25章
    • 劇中の情報だけだとあの人がそこにいる理由の説明がつきづらい。それがもう少しあって、演出ももう少し適切であれば、説得力もあり感動的なシーンになったのではなかろうか。
  • 26章(最終章)
    • 25章の展開のギャップ。合理的に考えると25章であの人がそこにいる理由はただ一つ「ラスボスの悪意」なのだが、この章で明らかになるラスボスのあまりに可愛い*8動機と噛み合わない印象を強く持った。

ストーリー及びキャラクタまとめ

世界観やストーリーが全体的に明るいのは別に良い。リアル中世の鬱屈した雰囲気がゲーム内世界全体に色濃いEchoesや、友人や昔馴染み同士の戦いがそのストーリーの魅力の軸であることから「道徳0点」と評されがちな風花雪月のような、暗い雰囲気の重厚なストーリーばかりがFEかといえばそうでもないと思う。 ただ「明るく分かりやすい悪を倒すストーリー」は「演出の不十分な感動狙いシナリオ」「字面でとりあえず取ってつけたような雑なキャラクタ差別化」「書割のようなキャラクタ描写」とセットである必要はないだろう。

そう考えると、容量の制限からキャラクタへの描写が薄くて許された時代とは違って、ストーリー分岐なしに30人からの自軍ユニットがいる、ということ自体に無理があるのかも知れない。直近の前3作が

  • ストーリー分岐+カップルによって成長特性の異なるif
  • 2軍を同時に操作することでそれぞれにフィーチャする機会のあるEchoes
  • ストーリーが4分岐する風花雪月

となっているのもそれを反映しているのかもしれない。

総評

というわけで、「間口を広くしたい」という制作者の意図とは裏腹に、明確にプレイする人を選ぶゲーム、ということは言えそうである。

お勧めできるのは以下のような。

  • シナリオよりSPRGとしての完成度を重視する
  • キャラクタ紹介を見て好みのキャラクタがいる*9
  • 歴代作品で言えば、覚醒やifの方が風花雪月やechoesより好き

逆にお勧めできないのは以下のようなプレイヤーである。

  • シナリオの整合性や演出がゲームパートより気になる
  • キャラクタの描写に風花雪月級の深みや多面性を求める
  • 歴代作品で言えば、風花雪月やechoesの方が覚醒やifより好み

もっとも、所謂「オタクコンテンツ」業界における今時の流行の傾向を鑑みるに、ガチ大河ストーリーに寄せるよりは本作のような作風の方が、「本邦オタク市場での」間口は広いのかも知れないなどとも思わないではない。海外市場まで視野に入れるとそうでもなかろうとは思うのだけれども。

*1:記憶にある限りだと、聖戦、トラキア、風花雪月が70hくらい

*2:今回は昇格用のマスタープルフと同格移行・降格用のチェンジプルフの2本建でifと同じ様式

*3:結局800時間以上プレイした

*4:シルヴァンは風花雪月世界の矛盾のかなりの要素を一身に背負う人物なので極端な例ではある

*5:同じ「天才」の括りでも、「努力する天才」リシテアとの対比性もある

*6:これは同作ではそれらのキャラとのペアエンドがないということでもあり、それ自体に考察ないし妄想の余地が多くある

*7:海猿の映画がNYで爆笑された話に近いのではないかと思っている

*8:あの見た目のラスボスをこう評するのもどうかと思うが、あの動機は正直本当に可愛い(或いはショボい)としか言いようないと思う

*9:このキャラ紹介は、CVまできちんと確認すれば裏切られることはないはず